神秘学概論と神経神学
2025年04月13日
「神秘学概論」はルドルフ・シュタイナーという人が1909年に書いた本です。
「神経神学」はニューバーグ・アンドリューという人が2018年に書いた本です。
いま私はこの109年の隔たりのある二つの書籍を読み比べています。
「神秘学概論」は第1章”神秘学の性格”まで読み終わり、「神経神学」は第5章”霊性の神経神学的側面とは”まで読みおわっています。
それぞれの書籍が何を対象にしているかなんとなくわかる程度の理解度です。
「神秘学概論」はシュタイナーの言うところの『魂』で霊視を行い知り得たことが書かれています。しかし私はシュタイナーが言うところの『魂』が何を指しているのかが全くわからず、これ以上読み進めてよいか迷っているところです。
内容的には、可視的な世界の背後には不可視的な世界があり、人間の中にまどろんでいる能力を開発して、この隠された世界に参入すれば本の内容が真実だとわかるであろう、ということのようです。
ちょっとこの人の考え方で気になるのは
『人間に与えられた超感覚的能力を開発し役立てる代りに、それを窒息させてしまうとしたら、人類に対して大きな罪を犯すことになる。』
というところですね。
1914年に第一次世界大戦、1939年に第二次世界大戦のあった時代なのでそのような強い表現になるのかとは思うのですが、ここにすこし違和感を感じます。シュタイナーの言うところの超感覚的能力を開発しているか否かで人類を善と罪人に分けてしまったのでしょうか。
一方「神経神学」は宗教や霊性を『脳』をとおして理解しようとします。
宗教と霊性には感情、行動、認知、経験など多くの主観的要素が含まれます。
それら主観的要素をアンケートという形で測定するとします。
片方ではその主観的要素を脳スキャン・生理学的に測定します。
この二つを比較研究することで宗教や霊性を科学的に解明しようということのようです。
まず宗教や霊性の定義からはじまり、それをどう測定するかを決めて……と、想像しただけで難儀な先の長い道のりだとわかります。
それでも例えば『魂』が脳の複雑な活動により作り出されたものなのか、それとも脳の先にあるものなのか科学的にわかればそれは凄いことです。
あくまでも私の受けた印象ですが
「神秘学概論」はシャタイナーという一人の人間が霊視により得た知識をトップダウン的に伝えています。
「神経神学」は多数の研究者が宗教や霊性といった個人にとって主観的な内容を、脳神経学その他もろもろの学問で科学的に解明して、その知識を少しずつ積み重ねています。
大衆スピリチュアル的にはすでに出来上がっている「神秘学概論」のほうに部があるでしょうが。私はその神秘学のスタートにある『魂』の考え方が私の持っている『魂』のイメージとかけ離れており違和感を感じます。
一方「神経神学」のほうは、その学問の対象である宗教と霊性が主観的であやふやなんですが、それをいきなり『魂』と結びつけるのではなく『脳』を通して科学的に理解しようという姿勢に好感を持ちます。
かといって「神経神学」では『魂』という概念を排除しているわけでなく、もしかすると最終的には科学により『魂』は脳とは関係ないところに存在するなんて結論が出る可能性もあります。まあそんなショッキングな結論がでないにしても「神経神学」で得た知見により『魂』という概念が斬新にブラッシュアップされるでしょうね。