よんなーハウス

エイサーの音

いつから開けっ放しだったか、もう思い出せない窓の隙間から、夜の湿った空気が流れ込んでくる。どこか遠くから、トントン、トトト、と地を這うような太鼓の音が聞こえる。エイサーの響きだろうか。自分とは関係のない世界の熱気が、耳を塞いでもなお、この四角い部屋の空気を震わせている。

その蒼白い光は、ただ事実として部屋の隅々まで差し込んでくる。…すべてが静かに照らし出されている。昔は、この光を残酷だと感じたこともあった。今は、何も思わない。どう思おうと月はそこにある。

その、まあるい月を背景に、ふっと黒い影がよぎった。鳥にしては、羽の動きがどこか違う。コウモリだ。あの黒い影は、あっという間に視界から消えた。どこへでも行けるのだろう。そう思うことにも、もう飽きた。あの小さな生き物が見ている夜景は、どんなものだろう。家々の窓から漏れる光、遠い通りのざわめき。そして、もう何年も前からこうして月を見上げるだけの、自分の姿も、あの目には映っているだろうか。

遠くの太鼓の音は、まだ鳴りやまない。月と、コウモリと、遠い祭りの音。すべてが俺を置いて、それぞれの時間を生きている。明日もきっと、同じ窓から、同じ月を見る。

©makaniaizu 2024