よんなーハウス

うるま市におけるひきこもり支援の現状


ひきこもり支援について調べていくと、どうしても一つの問題へとたどり着く。

それは当事者やその家族が公的機関の支援に行き着くのは難しいということ。

それだから「家族会」などがあり、そこで情報を交換することで、公的支援を利用する意思が生まれる、という流れが大事になるのだけど、DeepResearchに調べてもらうと、ひきこもり家庭のなかで家族会に参加しているのはほんの数%(2%弱)ではないかということでした。

はっきりと言えば、その「家族会」等にさえ参加する家族が少なければ、おのずと公的機関に支援を求める人も少なくなります。

結果、支援を行う公的機関を利用する人も少なくなり、それら機関が充実していなくてもなんら困らないという訳のわからない状態が生まれます。

うるま市の現状を調べると、いままさにそのような状態に陥っているように思えます。

以下いつものようにDeepResearchで網羅的に調べた結果をレポートにまとめてもらいました。

もちろんこのレポートをまとめてもらうまでに、ひきこもりについて様々なことを質問し回答して貰い、私の頭の中を整理させています。

ひきこもり問題というものは本当に見えにくいものなので想像するしかないところがあります。

それを正しく想像するためには、多角的な正しい知識を持つことが大切になるのではと思います。

ひきこもり問題を考える際の参考になれば幸いです。

=== 以下がそのレポートです ===

はじめに:沖縄の文脈におけるひきこもり問題の理解


ひきこもりは、単なる個人の選択や「甘え」といった問題ではなく、多様な要因が複雑に絡み合って生じる社会的な現象である 1。厚生労働省のガイドラインによれば、ひきこもりとは「様々な要因の結果として社会的参加を回避し、原則的に6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と定義される 2。この状態は特定の病気や障害を指すものではなく、その背景には個人の心理的課題、家族関係、そして社会的な困難が存在する。

この問題の規模を把握するため、まず全国的なデータに目を向ける。内閣府が令和4年度に実施した調査では、日本全国で約146万人が広義のひきこもり状態にあると推計されている 3。この全国的な発生率を沖縄県の人口に当てはめると、県内には約17,700人のひきこもり状態にある人々が存在する可能性が示唆される 3。この数値は正確な実数ではないものの、ひきこもりが一部の特殊な人々の問題ではなく、県レベルで取り組むべき重大な社会福祉課題であることを示している。

特に沖縄県およびうるま市においてひきこもり問題を考察する際、その特有の社会的背景を無視することはできない。沖縄県およびうるま市は、ひとり親世帯の割合が高いなど、特有の社会的背景を抱えている 4。

研究によれば、ひきこもりのきっかけの一つに、「『普通』のレールから逸脱してしまった」という感覚や葛藤が挙げられる 6。したがって、沖縄におけるひきこもり支援は、単なる心理的カウンセリングや精神科医療に留まらず、雇用や住居といった生活基盤そのものを支える包括的なアプローチが不可欠である。本レポートは、このような認識に基づき、うるま市におけるひきこもり支援の現状を多角的に分析し、より実効性のある支援体制の構築に向けた戦略的な提言を行うことを目的とする。


第1章 公的支援の構造


うるま市民が利用可能な公的支援は、沖縄県が提供する専門的な広域支援と、うるま市が担う基礎自治体としての福祉サービスという二層構造になっている。しかし、その実態を分析すると、専門性の集約が地理的なアクセス障壁を生み、市の対応は間接的かつ断片的なものに留まっているという構造的な課題が浮かび上がる。


1.1 県レベルのセーフティネット:集約された専門性と遠隔のアクセス


沖縄県は、ひきこもり支援に関する専門的な中核機関を設置している。これらの機関は高度な専門性を有する一方で、その所在地がうるま市から離れているため、利用者にとっては物理的・心理的な障壁が存在する。

沖縄県ひきこもり専門支援センター

平成28年(2016年)10月に沖縄県立総合精神保健福祉センター内に設置された、ひきこもり問題に特化した県の中心的な相談機関である 7。臨床心理士や精神保健福祉士などの専門家が配置され、本人およびその家族を対象に無料の電話相談や来所相談(要予約)を提供している 7。その役割は、個別の相談対応に留まらず、相談者の状況に応じて地域の医療・保健・福祉・教育・労働といった関係機関へつなぐこと、支援者向けの研修会を開催して地域の支援力向上を図ること、そして連絡協議会を設置して関係機関との連携を強化することなど、多岐にわたる 1。

しかし、このセンターの最大の課題はその立地にある。センターは南風原町宮平に所在しており 1、うるま市からはかなりの距離がある。沖縄の車社会という特性 4 を考慮しても、問題を抱え、外部に助けを求めること自体に高い心理的ハードルを感じている家族にとって 2、この物理的な距離は相談へのアクセスを著しく困難にする要因となっている。

子ども若者みらい相談プラザ「sorae(ソラエ)」

もう一つの重要な県レベルの機関が「sorae」である。これは、不登校、ニート、ひきこもりなど、社会生活を円滑に営む上で困難を有する0歳からおおむね39歳以下の子ども・若者を対象としたワンストップの相談窓口である 8。ここにも各分野の専門家が配置され、幅広い相談に応じている 8。しかし、soraeの拠点も那覇市と名護市にあり、いずれも中部に位置するうるま市からはアクセスしやすいとは言えない 1。

これらの県レベルの支援体制は、高度な専門知識を持つ人材を特定の拠点に集約する「専門性集約型モデル」と言える。このモデルは質の高い支援を提供する上で効率的であるが、同時に利用者との間に「ラストワンマイル問題」を生じさせる。理想的な支援のあり方として「身近な場所で支援を受けられること」が掲げられているが 11、現状の県の体制は、うるま市民にとっては、この理想とは乖離している。この構造は、県と地域住民とを繋ぐ「架け橋」として、うるま市自身の地域密着型支援体制が極めて重要であることを示唆している。


1.2 うるま市の行政対応:断片的かつ間接的なアプローチ


基礎自治体であるうるま市のひきこもり支援への対応は、専門の部署や窓口を設ける直接的なアプローチではなく、既存の福祉制度の枠組みの中で間接的に対応する形をとっている。これにより、支援の入り口が分かりにくく、当事者や家族が適切な支援にたどり着きにくい状況が生まれている。

公式窓口としての障がい福祉課

うるま市の公式ウェブサイトでは、ひきこもりに関する相談の担当部署として「福祉部障がい福祉課」が明記されている 12。この課の主な業務は、身体障害者手帳や療育手帳等の交付、障害福祉サービス(介護給付費等)の提供、自立支援医療など、制度的に「障がい」と認定された人々への支援が中心である 13。

この部署設定は、制度設計上の重大な課題を提起する。「ひきこもり」はあくまで「状態」であり、精神疾患などを併発しているケースはあるものの 8、それ自体が制度上の「障がい」と直結するわけではない。そのため、ひきこもり状態にある本人や家族の多くは、自らを「障がい者」とは認識しておらず、「障がい福祉課」という名称の窓口に相談することに強い抵抗を感じるか、あるいは自分たちは対象外であると自己判断してしまう可能性が高い。これは、支援を求める最初の段階で強力な「入り口の障壁」を作り出してしまっていることを意味する。スティグマを恐れて相談をためらう家族にとって 8、「障がい」というラベルの付いた扉を叩くことは、さらなる心理的負担を強いることに他ならない。

政策の枠組み:第四次地域福祉計画と発達支援ロードマップ

うるま市の地域福祉の指針となる「第四次うるま市地域福祉計画」では、「社会的孤立」への対応や「地域共生社会」の実現といった理念は掲げられているものの、ひきこもり問題に特化した具体的な戦略や事業計画は見当たらない 16。「8050問題」といった課題は認識されているが、それが具体的なアクションプランに落とし込まれているとは言い難い状況である 17。

また、「うるま市発達支援ロードマップ」においては、「不登校・引きこもり対策」という文言が登場するが、その文脈は主として教育支援センターを通じた教育相談や発達障がいの支援に関連付けられており、福祉分野全体を横断する包括的な対策とはなっていない 18。これは、各分野が個別に課題対応する「縦割り行政」の典型例と言える。

うるま市社会福祉協議会

地域の福祉を担う中核的な団体であるうるま市社会福祉協議会は、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)による総合相談などを実施している 19。これらの事業は、生活上の困難に直面している人々にとって不可欠なセーフティネットであるが、社会福祉協議会としてひきこもり支援に特化した専門プログラムを運営しているという情報は見当たらない 19。

総じて、うるま市の公的支援は、ひきこもりという複合的な課題に対して、専門的かつ統一された窓口を設けるのではなく、障がい福祉、貧困対策、教育支援といった既存の制度の中に埋め込む形で対応している。これにより、当事者や家族は、複雑な行政の仕組みを自力で解読し、適切な支援を探し出さなければならないという重い負担を強いられている。これは、専門の条例を制定したり 20、包括的な相談センターを設置したりしている他の先進自治体の取り組み 21 とは対照的である。


第2章 コミュニティを基盤とした支援エコシステム


うるま市の公的支援が間接的である一方、地域社会に根差したNPOや民間事業者が、実質的な支援の最前線を担っている。特に市内に拠点を置くNPOは、当事者や家族にとって最もアクセスしやすく、専門的なサービスを提供する重要な存在となっている。


2.1 NPO法人の役割:真の最前線


うるま市内およびその近郊には、ひきこもり支援に積極的に取り組むNPO法人が複数存在する。これらの団体は、行政の手が届きにくい、寄り添い型のきめ細やかな支援を提供している。

NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい

「ちゅらゆい」は、うるま市田場に拠点を構える、この地域におけるひきこもり支援の中核的な存在である 1。不登校やひきこもり状態にある子どもの親たちが中心となって2007年に設立された経緯を持ち、当事者家族の視点に立った活動を展開している 23。その事業内容は、若者たちが安心して過ごせる「居場所」の提供、就労移行支援や就労継続支援B型といった職業訓練、そして家族の孤立を防ぐための「親の会」の運営など、極めて多岐にわたる 24。特に「親の会」は、毎月第2火曜日にうるま市健康福祉センター「うるみん」で開催されており、地域に密着したピアサポートの場として重要な機能を果たしている 26。さらに、家庭に直接訪問するアウトリーチ(訪問支援)も実施しており、家から出られない最も孤立した層へのアプローチを試みている 24。

NPO法人幸せの魔法つ会(あいとぴあ)

うるま市勝連平安名に事業所を置くこのNPOは、主に就労支援に特化した活動を行っている 27。運営する「あいとぴあ」では、一般企業での就労が困難な人々を対象に、生産活動の機会を提供する「就労継続支援B型」と、自立した日常生活を送るための訓練を行う「自立訓練(生活訓練)」のサービスを提供している 27。利用者の意思と人格を尊重し、地域や家族との結びつきを重視した運営方針を掲げており、社会参加への具体的なステップを支援する役割を担っている 27。

その他の主要なNPO(うるま市民が利用可能)

  • NPO法人サポートセンターゆめさき:隣接する沖縄市に拠点を置くが、県の委託を受けて「sorae」の相談業務を担うなど、広域的な活動を展開している。通信制高校のサポート校やフリースペースの運営も行っており、学齢期の支援に強みを持つ 10。
  • NPO法人夢WALK:浦添市を拠点とし、ひきこもりや不登校、障がいを持つ人々を対象としたコミュニティ支援や相談事業を行っている 30。

これらのNPO、特に市内に拠点を置く「ちゅらゆい」や「あいとぴあ」は、うるま市における専門的かつアクセス可能なひきこもり支援の事実上の最前線を形成している。行政の窓口が「障がい福祉」という限定的な入り口であるのに対し、これらのNPOは「ひきこもり」「不登校」といった当事者の悩みに直接的に応えるプログラム、物理的な居場所、そして何よりも重要な家族同士の支え合いの場を提供している。市の公的サービスが十分に機能していない部分を、NPOが補完しているという構図が明確に見て取れる。うるま市の住民にとって、行政機関よりも先にこれらのNPOに助けを求める方が、より実践的で適切な支援に繋がる可能性が高い。この事実は、市の支援戦略が、これらのNPOを単なる外部の協力機関としてではなく、公式な支援ネットワークの中核として位置づけ、安定的な財政支援と共動体制を構築する必要があることを強く示唆している。


2.2 民間および市委託サービス:雇用と生活への架け橋


NPOと並行して、市の委託を受けた民間事業者が、特に生活上の困難と就労の問題に焦点を当てた支援を提供している。

うるま市 就職・生活支援パーソナル・サポート・センター

このセンターは、生活上の困難を抱える人々を支援する法律に基づき、うるま市が民間企業(合同会社クレッシェレ)に委託して運営している相談支援機関である 31。最大の特徴は、うるま市役所本庁舎内に窓口が設置されていることであり、物理的なアクセスは非常に良好である 31。

主な業務は、生活上の困難を抱える住民一人ひとりに合わせた支援プランの作成、住居に関する支援、そして「社会との関わりに不安がある」「ひきこもり」などを理由に直ちに就労することが難しい人を対象とした「就労準備支援事業」である 31。この事業では、生活習慣の改善やコミュニケーション訓練などを通じて、社会参加への準備をサポートする。

このセンターは、福祉と雇用の連携を具現化する重要な拠点である。市役所内という立地は、他の行政サービスとの連携を容易にする戦略的な利点を持つ。しかし、その支援の枠組みは「生活上の困難」と「就労」が中心である。そのため、子どものひきこもりに悩む家族にとっては、自分たちの問題とは関係がないと捉えられてしまう可能性がある。このセンターがひきこもり支援において真に効果を発揮できるかどうかは、スタッフがひきこもり特有の心理的ニーズをどの程度理解し、専門的な対応ができるか、そして前述のNPOや県の専門支援センターといった他の機関とどれだけ緊密に連携できるかにかかっている。NPOとパーソナル・サポート・センターが連携し、柔軟な相互紹介(リファラル)体制を築くことが不可欠である。


第3章 支援ネットワークの実効性とアクセシビリティの分析


うるま市には多様な支援機関が存在するものの、それらが有機的に連携した「ネットワーク」として機能しているとは言い難い。利用者の視点から見ると、支援への道のりは複雑で、制度的な隙間といった複数の障壁が存在する。


3.1 利用者体験の追跡:縦割り行政の迷宮


ひきこもりに悩むうるま市在住のある家族が助けを求めようとする際の、仮想の道のりを追跡することで、現在の支援システムが抱える構造的な問題を明らかにできる。

第一歩:どこに相談すればいいのか?

多くの家族は、まずインターネットで「うるま市 ひきこもり 支援」といったキーワードで検索することから始めるだろう。その結果、市の公式ウェブサイトにたどり着き、担当が「障がい福祉課」であることを知る 12。しかし、前述の通り、この名称は多くの家族をためらわせる。あるいは、検索結果の上位に表示された県の「ひきこもり専門支援センター」に電話をかけるかもしれない 7。そこで専門的なアドバイスは得られるものの、来所相談を勧められた際に、南風原町までの物理的な距離が次の障壁となる。

第二の壁:縦割り行政(サイロ・エフェクト)

運良く市内のNPO「ちゅらゆい」の存在を知り、連絡を取った場合、より当事者の状況に即した対応が期待できる 12。しかし、問題が複合的である場合、さらなる困難が生じる。例えば、ひきこもり状態にある子どもが不登校でもある場合、教育委員会管轄の「教育支援センター」との連携が必要になる 18。発達障がいの可能性があれば、医療機関や「がじゅま~る」への相談が推奨される 12。

このように、教育、福祉、医療、労働といった各支援が、県の文書でも課題として指摘されている通り「縦割り」で実施されているのが現状である 8。各機関がそれぞれの専門分野に対応するものの、それらを横断して利用者の情報を共有し、一体的な支援計画を立てるための明確な仕組みが見当たらない。結果として、支援の全体像を組み立て、各窓口を渡り歩くという重労働が、精神的・肉体的に疲弊している当事者や家族自身に課せられてしまう。支援機関への不信感や対応への不満から相談を中断してしまうケースも少なくないことが研究で示されており 6、現在のうるま市のシステムは、まさにそのような離脱を生みかねない、利用者にとっては極めて過酷な「迷宮」となっている。


3.2 システム上のギャップと課題の特定


利用者視点での分析から、うるま市の支援体制にはいくつかの重大なギャップが存在することが明らかになる。

  • 一元的・専門的な中核拠点の不在:最大の課題は、新宿区の「ひきこもり総合相談窓口」や総社市の「ほっとタッチ」のような、市が主体となって運営する、分かりやすくアクセスしやすい「ワンストップ相談拠点」がうるま市に存在しないことである 21。現在の体制では、相談者はどの扉を叩くべきか、自ら判断しなければならない。
  • アウトリーチ(訪問支援)の不足:ひきこもり状態にある人の多くは、自ら家を出て相談機関に赴くことが極めて困難である 2。NPO「ちゅらゆい」などが訪問支援の重要性を認識し実践しているが 24、市が主導する体系的なアウトリーチ・プログラムは存在しない。これは、最も支援を必要としている孤立層にアプローチする手段を市が持っていないことを意味し、致命的なギャップと言える。
  • 社会的偏見と啓発活動の必要性:ひきこもりに対する無理解や偏見は、当事者や家族をさらに苦しめ、相談への一歩を妨げる大きな要因となる 8。県は啓発の重要性を認識しているが 8、基礎自治体であるうるま市レベルでの、地域住民に向けた継続的な啓発活動が不可欠である。
  • 家族支援の体制:ひきこもりが長期化すると、家族もまた疲弊し、孤立する 7。NPOが「親の会」などを通じて家族支援を担っているが 26、その活動の持続性や規模は団体の体力に依存している。家族が適切な関わり方を学び、精神的な負担を軽減できるような公的な支援プログラム(家族教室など)の整備が求められる。家族からの過度なプレッシャーが状況を悪化させることもあるため 6、家族支援は本人支援と一体のものとして捉える必要がある。


第4章 戦略的な前進への道筋:統合的システムへの提言


うるま市のひきこもり支援体制が抱える課題を克服するためには、現状の断片的なアプローチから脱却し、先進自治体の事例に学びながら、より統合的で利用者中心のシステムを構築する必要がある。以下に、そのための具体的な戦略と行動計画を提言する。


4.1 全国の先進事例からの教訓


他の自治体における先進的な取り組みは、うるま市が目指すべき方向性を示す貴重な道標となる。

  • ひきこもり支援に特化した条例の制定:埼玉県や東京都のいくつかの区では、ひきこもり支援に関する条例が制定されている 11。これらの条例は、支援を自治体の責務として法的に位置づけ、基本理念や関係機関の役割を明確にすることで、継続的かつ安定的な支援体制の基盤を築いている。これは、個別の計画に依存するうるま市の現状とは大きく異なるアプローチである。
  • 一元化された相談支援拠点(ハブ)の設置:岡山県総社市が社会福祉協議会に委託して運営する常設の居場所「ほっとタッチ」や、東京都新宿区・墨田区が設置した「ひきこもり総合相談窓口」「すみ家(か)」は、誰でも気軽にアクセスできる明確な「入り口」として機能している 21。これらの拠点は、相談から居場所の提供、家族会、関係機関へのつなぎまでを一体的に行い、縦割り行政の弊害を克服している。
  • 革新的なアウトリーチとオンライン支援:情報が届きにくい当事者にアプローチするため、墨田区ではVTuber(バーチャルYouTuber)を活用した動画配信を行い、心理的な抵抗感の低い形で情報提供と繋がりづくりを試みている 21。また、兵庫県神戸市や高知県では、専門職やひきこもり経験者(ピアサポーター)による家庭訪問を体系的に実施しており、最も孤立した層への働きかけを強化している 34。
  • 分野横断的な連携(クロスセクター・コラボレーション):滋賀県では教育委員会と福祉部局が正式な連携協定を結び、不登校からひきこもりへの移行を防ぐ取り組みを行っている 33。また、高知県安芸市では、農業分野と福祉分野が連携する「農福連携」を通じて、ひきこもり状態にある人々に新たな就労と社会参加の機会を提供している 33。これらは、単一の部局では解決できない複雑な課題に対し、分野を超えた協働がいかに有効であるかを示している。


結論:連携と協働による包摂的なコミュニティの実現に向けて


本レポートによる調査分析の結果、うるま市におけるひきこもり支援の現状は、大きな可能性と深刻な構造的課題が混在する複雑な様相を呈していることが明らかになった。市内に拠点を置くNPO法人「ちゅらゆい」や「あいとぴあ」などは、当事者や家族のニーズに即した専門的かつ献身的な活動を展開しており、地域における支援の貴重な資源となっている。一方で、市の公的支援体制は、担当窓口が「障がい福祉課」に限定されていること、ひきこもりに特化した具体的な計画や一元的な相談拠点が欠如していることなどから、断片的かつ間接的な対応に留まっている。この「強力な民間資源」と「断片的な公的枠組み」との間のギャップが、支援を必要とする人々が適切なサービスにたどり着くことを困難にしている最大の要因である。

利用者の視点に立てば、現在のシステムは、支援機関の迷路を自力で彷徨うことを強いるものであり、問題解決への道のりはあまりにも険しい。この状況を打開するためには、新たな支援機関をゼロから作り出すことよりも、既存のピースを戦略的に繋ぎ、資金を投入し、その能力を最大限に引き出すことが求められる。

本レポートで提言した「社会つながり支援センター」の設立、NPOとの正式なパートナーシップ構築、積極的なアウトリーチ戦略の展開、そして市条例の制定検討は、そのための具体的なロードマップである。これらの施策は、縦割りの壁を越え、官と民、そして地域社会が一体となって一人の孤立も見逃さないという強い意志の表れとなる。

うるま市が掲げる『誰もが共に支えあう“いーやんべー”のまちづくり』という理念 16 は、まさにひきこもり支援が目指すべき社会像そのものである。この理念を真に実現するためには、現在の迷宮を、誰もが安心して助けを求めることができる、明確で温かい支援の道筋へと変革していくことが不可欠である。それは、一人の市民の尊厳を守ると同時に、地域社会全体の強さと優しさを育む、未来への投資に他ならない。

引用文献

  1. 沖縄県ひきこもり専門支援センター, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/688/hikisen.pdf
  2. 沖縄県・那覇市のひきこもり支援について|子どものMIKATA - note, 7月 4, 2025にアクセス、 https://note.com/kodomo_no_mikata/n/ncd2d884df01f
  3. ひきこもり専門支援センター通信 - 沖縄県, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/650/0206tuushin5.pdf
  4. 沖縄の子ども・若者の課題Issue - ちゅらゆい, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.churayui.org/about/issues.html
  5. 困窮するシングルマザーにまず住宅を――「家賃どう払う」切実な課題に広がる自治体の支援, 7月 4, 2025にアクセス、 https://sdgs.yahoo.co.jp/featured/216.html
  6. ひきこもりに関する調査の現状と今後の課題, 7月 4, 2025にアクセス、 https://tezukayama.repo.nii.ac.jp/record/1116/files/shinri06_06_kurimoto.pdf
  7. 沖縄県ひきこもり専門支援センター, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.lg.jp/iryokenko/kenko/1018569/1006301.html
  8. ひきこもり支援(社会的孤立対策)|沖縄県公式ホームページ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.jp/iryokenko/kenko/1018569/1006133.html
  9. 沖縄県ひきこもり専門支援センター|沖縄県公式ホームページ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.jp/iryokenko/kenko/1018569/1006301.html
  10. サポートセンターゆめさき | 不登校・ニート・ひきこもり・軽度発達 ..., 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.supportcenter-yumesaki.com/
  11. 埼玉県ひきこもり支援に関する条例, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0705/hikikomorijourei.html
  12. 引きこもりについて | うるま市公式ホームページ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/1004004000/contents/871.html
  13. 障がい福祉課 | うるま市公式ホームページ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/1004004000/contents/2323.html
  14. うるま市行政組織規則, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www1.g-reiki.net/uruma/reiki_honbun/r170RG00001481.html
  15. 障がい者自立支援サービス | うるま市公式ホームページ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/1004004000/contents/876.html
  16. 第四次うるま市地域福祉計画・第4次うるま市地域福祉活動計画を策定しました, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/1004001000/contents/29816.html
  17. 【基本理念】 「~誰もが共に支えあう“いーやんべー“のまちづくり~」 をめざして - うるま市, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/documents/1177/fukusikeikaku041.pdf
  18. うるま市 配慮を要する子への支援体制整備に係るロードマップ, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.uruma.lg.jp/documents/1484/roadmap.pdf
  19. 困りごと心配ごとに関すること, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.uruma-shakyo.net/%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E7%B4%B9%E4%BB%8B/%E5%9B%B0%E3%82%8A%E3%81%94%E3%81%A8%E5%BF%83%E9%85%8D%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8/
  20. ひきこもり支援に関する条例 | 法制執務支援 | 条例の動き | RILG 一般財団法人 地方自治研究機構, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/128_hikikomori.htm
  21. 区市町村における 支援の実例 - ひきこもりサポートネット, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.hikikomori-tokyo.jp/pdf/guidebook_jirei.pdf
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  23. NPO法人 ちゅらゆい|社会孤立する子ども・若者の自立支援団体, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.churayui.org/index.html
  24. NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい(団体ID:1263484550) - CANPAN, 7月 4, 2025にアクセス、 https://fields.canpan.info/organization/detail/1263484550?view=pc
  25. NPO法人 ちゅらゆい|社会孤立する子ども・若者の自立支援団体, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.churayui.org/
  26. 専門支援センター通信 - 沖縄県, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/650/hikisentuushin_dai3gou.pdf
  27. NPO法人幸せの魔法つ会 - 指定就労継続支援(B型)・自立訓練(生活訓練)事業所「あいとぴあ」, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.aitopia.okinawa/about.php
  28. NPO法人幸せの魔法つ会(団体ID:1046717185) - CANPAN, 7月 4, 2025にアクセス、 https://fields.canpan.info/organization/detail/1046717185
  29. Service事業内容について - 指定就労継続支援(B型)・自立訓練(生活訓練)事業所「あいとぴあ」, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.aitopia.okinawa/service.php
  30. NPO法人 夢WALK 〜ひきこもり・不登校・ニート・障がい支援〜, 7月 4, 2025にアクセス、 https://yumewalk-okinawa.or.jp/
  31. うるま市パーソナルサポートセンター - うるま市に住まう全ての人々に寄り添う, 7月 4, 2025にアクセス、 https://ps-uruma.com/
  32. 沖縄市ひきこもり相談について, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.city.okinawa.okinawa.jp/k071/contents/hikikomori.html
  33. ひきこもり支援に先進的に取り組む自治体の事例, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www.mext.go.jp/content/20211004-mxt_jidou02-000018256-3.pdf
  34. ひきこもり支援の強化 主な取り組み事例, 7月 4, 2025にアクセス、 https://www5.cao.go.jp/keizai1/c_hyogaki/jirei_5.pdf
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