随筆: 芥川龍之介の死
2024年07月09日
この随筆の作者は芥川龍之介と同じ夏目漱石門下であり、芥川の居宅も何度も訪ねている。
この筆者の随筆を読むと、人からお金を借りることを生きがいにしているのか、よく借金の話が出てくる。
この随筆でも、芥川の亡くなる二日前に芥川を訪ねたとき、帰り際に電車賃用の細かい銭がないからと芥川から小銭を借りている。
その時に芥川はおそらく家中にある小銭を集めてきたのではないだろうか、両手のひら一杯に小銭を持って二階の書斎に上がってきたそうだ。
他日にもお金に苦労しているという話をしたら、芥川は即座に額縁の裏から百円札を取り出し、随筆の筆者にあげたらしい。
当時の百円は今でいうと10万円くらい、芥川がへそくりをしていたとはあまり考えられないし、おそらく最初から筆者に渡すために用意していたのではないだろうか。
同じ夏目漱石門下ということもあろうが、芥川は随筆の筆者のことを理解して優しいのである。
この随筆には色々な芥川の姿が描かれている。
薬でしどろもどろだったり、友人が精神病院に入院したことにショックを受けて、皆も精神を病んでいるのではと疑り大丈夫かと聞いたり、ハイになっていたり、芥川とその新婦が偶然に筆者の乗った電車に乗ってきたときに、筆者と芥川の新婦の挨拶がおかしくて、二人の間で笑い転げたり……
でも芥川は非常に暑い日の続いたときに亡くなった。理由は考えれば色々あるのだろうが、なにが直接の原因かはわからないし、考えてもしょうがない。だから筆者は、余りの暑さのせいだったと考えることにした。何か確実な原因はと考えるのならば、それでいいのだろう。
最後に筆者は次の句で随筆を締めくくっている。
亀鳴くや夢は淋しき池のふち。亀鳴くや土手に赤松暮れ残り。
この随筆の筆者は芥川の死からだいぶ経ち、年齢を重ねてから随筆を書いたようです。それでも無念の思いがひしひしと伝わってきます。