よんなーハウス

陽の傾き

窓から入る光の角度が変わった。 真上から突き刺すようだった夏の光は、もうない。今は部屋の奥まで、影が長く伸びている。その光の中を、埃が静かに舞っているのが見える。キラキラと光って、ゆっくりと落ちていく。それだけを、ずっと見ていられる気もする。 床に映る光の四角が引き伸ばされて歪んでいるのを見ると、やはり、時間が取り返しようもなく過ぎ去ったというだけの話だ、と思い知らされるけれど。

空の色が、昨日とは違う。 夏の間、飽きるほど見た青ではない。もっと深く、澄んだ青。見ていると、吸い込まれて自分の輪郭が消えてしまいそうな、静かな色だ。海の青も、もう鮮やかじゃない。

昼が短くなった。夕暮れが来るのが早い。 夜になれば、窓を揺らす風に、ほんの少しだけ熱がなくなった。どこからか、虫の声が聞こえる。りん、と澄んだ音。ああ、秋なんだな、と、その時だけは素直に思う。

でも、そんな小さな感傷は、すぐに部屋の静寂に溶けていく。

世界は、僕を置いていくように、それでいてすぐ隣で、淡々と巡っている。 この部屋の静寂だけが、その移ろいを容赦なく映し出す。 影が伸びる。また一日が、終わっていく。

©makaniaizu 2024