生命とは? DNAと宇宙エントロピーと哲学
初期の生命にはDNAがなく、ただ代謝をおこなっていた。
YouTubeを観ているときに、ある海洋生物の学者が「生命にDNAはいらない」とおっしゃっているのを聞いて、どういうことだろうとAIと議論していたら宇宙全体のエントロピー増大の法則や哲学的な思考にまでたどり着いたので、それをレポートとしてまとめてもらいました。
少しショッキングなところもあるかと思いますが、そういう考え方もあるのだなくらいに捉えてください。
レポート:「流れ」としての生命論
——熱力学・宇宙論・哲学から見る生命の本質と存在意義——
序論:遺伝子中心主義からの脱却
現代生物学において、生命の定義は長らく「自己複製を行うシステム(遺伝子の乗り物)」であるとされてきた。しかし、この定義は「種」の存続(時間的連続性)を説明できても、「個体」が今まさに生きているという現象(動的持続性)を説明するには不十分である。 本稿では、福岡伸一の「動的平衡」やシュレーディンガーの「負のエントロピー」の概念を基軸に、生命を物質的な「パーツ」ではなく、エネルギーの「流れ(プロセス)」として再定義し、その物理的および哲学的意義を考察する。
1. 生物学的視点:動的平衡と代謝
生命の本質は、DNAという静的な情報の保存にあるのではなく、「代謝」という動的なエネルギー変換プロセスにある。
- 動的平衡(Dynamic Equilibrium): 生物の構成物質(原子・分子)は絶えず入れ替わっており、数ヶ月前の自分と今の自分は物質的には別人である。にもかかわらず自己同一性が保たれるのは、合成と分解のバランスが保たれた「流れ」そのものが生命の実体だからである。
- 遺伝子の役割の再考: この視点において遺伝子は、生命そのものではなく、流れを維持するための「楽譜」や「ライブラリ」といった従属的な情報に過ぎない。初期生命(代謝先行説)の議論が示すように、システムとしての代謝回転こそが生命の必要条件である。
2. 物理学的視点:エントロピー増大と散逸構造
熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に従えば、宇宙は常に秩序から無秩序へ、熱平衡(死)へと向かっている。一見、秩序を形成する生命はこの法則に逆行しているように見えるが、実際には宇宙のエントロピー増大を加速させる装置として機能している。
- 負のエントロピーの摂取: シュレーディンガーが指摘した通り、生物は外部から秩序(食物)を取り込み、内部で発生した無秩序(熱・排泄物)を外部へ捨てることで、局所的な秩序を維持している。
- 散逸構造(Dissipative Structure): プリゴジンが提唱したように、エネルギーの流れがある「非平衡開放系」においては、エントロピーを外部へ排出し続けることで、自発的に安定した秩序(構造)が生まれる。生命とは、川の渦巻きと同じく、エネルギーが流れ続けることによってのみ形を保てる現象である。
3. 宇宙論的視点:熱的死への抵抗と加速
宇宙はビッグバン以降、膨張と共にエネルギー密度が低下し、最終的にはすべての温度差が消失する「熱的死(Heat Death)」または「ビッグ・フリーズ」へと向かっている。
- 生命の熱力学的役割: 地球の大気圏外に見られるような「太陽(高温)」と「宇宙空間(極低温)」の巨大なエネルギー勾配を解消するために、生命は存在する。植物が光エネルギーを捕らえ、生態系全体でそれを熱エネルギーへと変換・拡散させるプロセスは、宇宙が平衡状態へ至る速度を早める「触媒」として機能しているとも解釈できる。
- 排熱のパラドックス: 生物が体温を維持(秩序を維持)するために熱を放出する行為は、結果として外界との温度差を縮める(エントロピーを増大させる)行為であり、生命は生きようとすればするほど、宇宙の死(平衡)を早めるという宿命を負っている。
4. 哲学的視点:遺伝子(Gene)から思想(Meme)へ
生命を「物質」ではなく「流れ」として捉える視座は、人間の生き方や継承のあり方にも変革をもたらす。
- 実体論からプロセス論へ: 「私」という存在は固定的な核ではなく、流動的な現象である。この理解は、「諸行無常」や「空」といった東洋哲学の概念とも親和性が高く、変化そのものを受け入れる死生観へと繋がる。
- 情報の動的平衡: 人間において「流れ」を維持すべき対象は、単なる肉体の設計図(遺伝子)にとどまらない。思考、文化、技術といった「ミーム(文化的遺伝子)」を、淀ませることなく、誤りなく代謝させ(修正・更新し)、次世代へと受け渡していくこと。これこそが、人間という知的生命体が到達できる、より高次な「動的平衡」の維持である。
結論
「生命の定義に遺伝子はいらない」という命題は、生命を静的な「保存」の対象から、動的な「維持」の対象へと転換させるものである。 我々は、宇宙のエントロピー増大という巨大な濁流の中で、一瞬だけ生じた美しい「渦(秩序)」である。その渦を維持するために必要なのは、自身の複製(子孫)を盲目的に残すこと以上に、その渦を構成している「知性や精神の流れ」を清浄に保ち、後世という下流へ向かって正しく流し続けていく意志であると言える。