よんなーハウス

空に浮かぶ雲

部屋の窓は、世界のすべてを映し出す額縁のようであり、同時に、決して越えられない透明な壁でもある。いつもと同じはずの風景が、ある日、ふいに違う顔を見せつける。そんな時、どうしようもなく息が詰まるのだ。

今日の沖縄の空は、まさにそうだった。

まるで誰かが世界中の塵をすべて吸い取ってしまったかのように、空気が痛いほど澄み渡っている。強い陽射しが、向かいの家の壁のシミひとつひとつまでを、残酷なほど克明に照らし出していた。

見上げた空の青は、昨日までとは違う、どこか底の知れない色をしていた。そこに浮かぶ雲は、まるで時間が止まった彫刻のようだ。一つひとつの輪郭は憎らしいほどくっきりと浮かび上がり、その縁だけが淡く発光している。まるで、こちらの存在をあざ笑うかのように、ゆっくりと形を変えていく。

あの雲の向こうには、どんな世界が広がっているのだろう。そんなことを考えても、答えなどないと知っている。ただ、この小さな部屋と、遥か上空の大きな世界とを隔てる透明な壁が、今日はいやにはっきりと感じられた。

遠くから、微かに聞こえる波の音。網戸を通り抜けてくる風は、少しだけ乾いた砂の匂いを運んでくる。

世界の輪郭が、今日はいつもより少しだけ、はっきりと見えている。そのことが、胸の奥に小さな棘を刺すような、そんな昼下がりだ。

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