短編: 人生を移動に例えた小説
2024年12月17日
このオムニバスには、人生を移動に例えた作品が載っています。
その中には、あまり移動することを好まない人生もありました。
その主人公には母親のお腹にいるときに双子の弟がいました。
しかし出産時にはその弟は亡くなっておりました。
そのことを知らされてなかったのですが、 子供の頃は常に家族が一人足りないという感覚があったそうです。
戦争が起きて、その人の家族は全員収容所に送られました。
しかしその人の家族はみんなそこで亡くなりました。
その人が収容所にいるときの唯一の楽しみは、窓辺に訪れる鳥を見ることだったそうです。
時が流れ、その人は、人前に出ることの少ない有名作家となりました。
物質的な移動を好まない人になったようです。
それでもたまたま訪れることになった野鳥の森公園にて、彼はメリーゴーランドに乗ります。
そのメリーゴーランドは鳥をモチーフにしておりますが、それらは全て絶滅した鳥でした。
彼は絶滅したひとつの鳥に乗り 、それらとともに、ひとつの円をぐるぐると回り続けます。
それが彼にとっての人生の移動なのでしょう。
だからその彼は、自由に移動できる鳥を愛するのでしょう。